産経新聞 平成16年1月1日付け
 なにわ野菜の復活。
     「居酒屋に登場、エキス入り飴も」

一時は消えたといわれた大阪の伝統野菜「なにわ野菜」が研究・試作段階を過ぎ、外食産業にも利用されるなど
見直されつつある。大阪を地場とする居酒屋チェーンでメニューに採用されたほか、菓子メーカーがあめ細工をみやげとして売り出し、
大阪商工会議所でも大阪外食産業協会と協力して試食会を開くなど、一般消費者への浸透を図っている。(納富優香)

大阪の伝統野菜といえば泉州の水ナスが有名だが、他にも大阪市都島区の毛馬きゅうり、天王寺蕪、西成区の勝間南瓜などさまざまな「なにわ野菜」がある。
 宅地化や食生活の洋風化ですたれてしまったが、平成八年、ごろから大阪府立食とみどりの総合技術センターなどが中心となって栽培に乗り出し、十四年の生産は毛馬きゅうりや天王寺蕪で作付面積約四十e、、収穫量十トン程度まで増えた。
 なにわ野菜の特徴は味が濃くて形がしっかりしていること。煮物や漬物に適し、長時間煮込んでも型崩れせず、独特の香り、歯応えがある。
 チェーン店での利用も広がってきた。大阪市内を中心に居酒屋「志な乃亨」など十七店を展開するクロスキンキ
(大阪府守口市、南節男社長)では二年前から「地元でとれるおいしいもんを」(楠本政彦事業部長)と天王寺蕪のふろふきや
田辺大根のおでん、大阪水菜のはりはりなどを季節メニューに取り入れてきた。
約十品目を三カ月とに入れ替え、生産者の写真を入れた品書きを作るなどした結果、人気メニューに成長した。
 一方、豊下製葉(大阪市阿倍野区、豊下正良社長)では野菜エキスの入った「伝統飴野菜」を製造、リーガロイヤルホテルや
通販などで大阪みやげとして売り出している。茶の湯の干菓子の技術を生かし、色も形も野菜をかたどった見た目に
も楽しい商品だ。香料は一切使わず伝統野菜の搾り汁を使用し、七種類十二個入りで五百円。
 「天王寺の知人から誘われ食べてみたところ、これぞ野菜、という味。
これならあめにして負けないもんが作れるとピソときた」と豊下社長。もっとも「普通のあめの三倍手間がかかる。作るほ
ど赤字」で、商売抜きのようだ。
 大阪商工会議所が十四年に立ち上げた大阪の新たなみやげもの開発プロジェクでも、なにわの伝統野菜の普及を掲げている。
このほど辻学園調理技術専門学校で行われた試食会では、大阪外食産業界のメンバーや卸業者など約三十人が創作料理を試食し
「味が濃くておいしい」「大阪でなければ食べられない“売りもん”になる」と好評だった
課題は販売ルートの確保。生産者が安心して栽培できる市場づくりと、
企業が"商売"にできる安定供給は表裏一体で、大商などでは外食産業での間口を広げる模索が続きそうだ。