十八屋弥兵衛のひとりごと vol.8

-なにわの伝統野菜 その五-

飴のうんちくや日記の紹介
【玉造黒門越瓜・服部越瓜】


なにわの伝統野菜第二弾は玉造黒門越瓜と服部越瓜です。「越瓜」は「しろうり」と読みます。まずは玉造黒門越瓜のお話し。 大阪城の南東にある玉造門は黒塗りの門であったことから黒門と呼ばれていました。ここには阿倍野の股ヶ池を水源とする猫間川が流れており、その両岸には桃や桑が栽培されていたそうです。桃谷も桃ヶ池(股ヶ池)もこの名残の地名です。この川に大阪で最初の石橋が架かっており、黒門橋と呼ばれていたとのこと。「名物名産略記」(天保七年)の記載によると、この辺りで作られていた瓜は玉造黒門越瓜と言われていたそうです。一般には略して「くろもん」と呼ばれ、果実は太くて長くて濃緑色、八〜九条の縦縞があり、糠漬けがおいしかったことから名産となったとのこと。貞柳は「黒門といえども色はあおによし奈良漬けにして味をしろうり」と詠んでいます。この瓜には太種(ワリ)と、これより分系された細種(ホソ)の二系統があります。
高槻市の塚脇地区で昔から作られている服部越瓜は、果実が淡緑白色で淡い白縞があります。長い間漬け込んでも歯当たりがしっかりしているので、奈良漬け用としての品質に優れています。天保十四年の服部村明細帳に、「富田(とんだ)で造られる糟の漬けに専ら使用される」とあります。
私は浅漬けや糟漬けにしたものでのお茶漬(ぶぶづけ)が大好きですが、もどした干しえびと一緒に酒と出汁で煮て、水溶き葛粉でとろ味を付けた「あんかけ」にも捨てがたいものがあります。


十八屋弥兵衛 謹白